・・・

カフェで会った彼女は、店員さんに見つかると怒られるかな、と言いつつも何もオーダーせずに10分おきに鞄からナッツを取り出してこっそり頬張っていた。

先週から感情の起伏が4に留まったままで、唯一振れたのは上司にむかついた時だけだった。

緊張しながら彼女が日本語で解説しているのは、国連に訪れた観光客向けのスピーチで、私は彼女に第一号のお客さんを頼まれた。彼女のスピーチを聴き、質問して、質問されて、気付いたら日暮れ前になっていた。毎日のルーティーンをこなしているだけの自分に少し辿々しい日本語でつっかえながら説明する彼女をうらやましく思った。

彼女の真剣さに羨望をおぼえたことも事実だけど、解説の内容についても興味を抱いた。国連の役割、戦争、貧困、教育問題、日本の立場。先週は感情の起伏がなかった?甘えているだけの自分に気付く。何度も、今日はありがとうね、色々教えてくれてありがとう、と言われたけれど教えてもらったのはわたしだった。今日は彼女にとって日本語で国連内部を案内する初めての日だ。なんじに自分が呼ばれて案内を頼まれるか分からないから、と言っていた彼女は今日一日中ドキドキしながら待機しているんだろう。

近々、国連に行ってみようと思う。彼女のおかげで興味が湧いた。彼女の担当グループになるか分からないけど、一生懸命に解説を聞いて自分なりに色々感じてみたいと思う。