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不快なぐるぐる迷路、永遠と続く暗い螺旋階段を降りて行くわたしにそっちじゃないと声がきこえました。だけど止まれないんです、と言いかけ一歩踏み出そうと足を動かすとその螺旋階段は下りではなく上りに変わっていました。

頭の中の平面にしか感じていなかった世界が奥行きを伴って広がり前も後ろも横も上にも下にも空間が膨らみをもちはじめました。ああこれがクウとムの違いなのだと今なら理解できます。

誰にも何も説明できてない。できるわけがない。言葉として発する音や書き出した記号では感じた事の数パーセントしか正確性を持たないのに。思ってもみない事さえ口を突いてしまうというのに。そうこうしているうちに大事なものも失っていく気がするのに。

だけど多分、この人は分かっている。透明で大きな存在。賢者の発する現実の、呼びかけ。紙一重の世界。感じる重力。一見シンプルなのに複雑怪奇なわたしの心の出来事が読めているのでしょうか。きっかけじゃなく、まるでわたしの思考回路を辿っているみたいな。(リビドーにつまったものを排除すれば全てが収まるわけではないことも見越しているんですか?)

ビルの外に出たらマンハッタンの空から少し雨が落ちてきていました。傘持ってきてないな、強くなるのかなと思って雨雲を探したのですが意外にも青空が広がるばかりでした。天気雨。なんか似てますね、let it rain but keep the sky.