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(RED) Projectというのが、今展開されています。AppleやGap等の大きな企業が参加しているプロジェクトで、エイズ研究費用等を集める為の取り組みだそうです。

Adrian Shaughnessy というグラフィックデザイナーがいるのですが、彼の本のなかで、何故アメリカの大統領にブッシュがなってしまったのかをデザイナーという視点から説明していました。彼によると、他の大統領候補の投票用紙とポスターがダサかったらしいのです。そんな短絡的な理由でブッシュが大統領になってしまったなんて信じられない、と思う人がいるかもしれないけれど、わたしは強ち間違っておらず、事実の一つとして考えることができるのではないかと思うのです。

人間って常に選択を繰り返しながら生きていると思うのですが、たとえ小さな意識しないレベルのところでの選択の時にもその判断基準というのは、格好いいか、美しいか、で決まると思うのです。物質的な選択は当然のことながら、意識的な選択、例えば意見を口にするだとか、電話をかけるだとかも含め、主観的な格好良さや美しさの指針は人それぞれとはいえ、やはりわたし自身を顧みてもこの判断基準は当てはまる気がします。

(RED) Projectは、こういった点を含めて優れたプロジェクトであると思います。先ず一連のビジュアル展開がポジティブです。コンセプトにブレが無いことがそのシンプルさから分かるという点も素晴らしいと思います。この主な二点がこのプロジェクトに対しての格好良さ、美しさを齎します。

従って、本来エイズという取っ付き難く暗く、そして無視することの出来ない現実の問題解決を目指すこのプロジェクトと、このプロジェクトの製品を買うことによって参加する一般の人達の間には、格好いい美しいという概念が介在することにより、このプロジェクトは成功し、目的の達成を成し遂げるのではないかと思うのです。

エイズが大変だ、何百万人も死んでいる、他人事だと思わずに真剣になれよ、と訴えかけても大衆の反応は期待はずれなものになってしまうのではないかと思います。必死さが痛々しく映り、悲観的な雰囲気でその問題を覆ってしまうことで、寧ろ前に進めない状況を作りかねないのではないでしょうか。

確かに(RED) Projectでは著名な人々が名を連ねているばかりか、大企業が参加しているので小さな非営利団体が同じ方法で運動を展開するのは難しいと思います。しかし視覚的に優れた見せ方、つまり二者間において受け取り側が格好いい美しいと感じる方法に、お金がかかるとは限りません。大切なのは、発信側が、根本問題とともに、格好良さと美しさを共に提供できるかということなのだと思います。