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ふと、健康診断に行ったら病気にかかっていることが判明した。しかも医者が言うには、余命幾ばくも無いらしい。周りの友達には伝えられるだろうか。両親にどうやって伝えたら良いのか。自暴自棄になりながらもやっと一週間後にお母さんに電話してみることにした。言葉に詰まって伝えないといけないことが上手く話せず結局たわいもない会話で電話を切ってしまう。

嗚呼、いつもわたしはこんな風に言わないといけないことさえ上手く言い出せなかったなぁ、と思い、それをきっかけに今までの小さな失態が大きな後悔となって勝手に思い出される。自然にため息が出てしまい、自分の小ささを感じ、人生の短さを痛感する。意を決して携帯のボタンを押し、もう一度電話をかけてみる。母の、あれどうしたの?という声を聞き終わらないまま、自分に起きている事態を手短に話す。感情を込めないように努力したつもりが早口になって喋り終わった後、胸が詰まってしまう。

「よく、がんばって伝えることが出来たね。おめでとう。実はね、貴方が押したダイヤルは克服したい自分の性格やコンプレックスの改善を手助けする総合福祉センターに繋がっていたのですよ」

母の声とは微妙に違う、でも穏やかで優しい声がわたしにそう告げ、そしてこう言った。

「ご褒美があります。あなたの望みならなんでもいいので教えて下さい。今から一分後にもう一度、貴方の望みはなんですか?と訊くので、そのまま電話を切らずに。それでは一分後。ハイッ」

。。。どうしよう、あー、何か焦ってきた。んー、でも言いたいことが言えない自分にはサヨナラしたんだった!

「はい、それでは伺います。貴方の望みはなんですか?」

「じゃ、この曲をZAZEN BOYSの演奏で聴いてみたいです」


「分かりました。では特別にこちらで手配しますので楽しんで下さいね。以後、こちらの福祉センターには繋がることはありませんので。それでは」

「やったー!ありがとうございます、それではどうもでーす。ちゃお!」

カチャ。

あ、大事なこと訊き忘れた。わたしは結局病気にかかってるの?かかってないの?