矢はNYまで飛ばされ、弓となって福岡へ

そこで、子供を胸にかかえた女が言った。お話ください。子供のことを。

アルムスタファは言った。

あなたの子は、あなたの子ではありません。自らを保つこと、それが生命の願望。そこから生まれた息子や娘。それがあなたの子なのです。

あなたを通ってやって来ますが、あなたからではなく、あなたと一緒にいますが、それでいてあなたのものではないのです。

子供に愛を注ぐがよい。でも、考えは別です。子供には子供の考えがあるからです。

あなたの家に子供の体を住まわせるがよい。でもその魂は別です。子供の魂は明日の家に住んでいて、あなたは夢のなかにでも、そこに立ち入れないのです。

子供のようになろうと努めるがよい。でも、子供をあなたのようにしようとしてはいけません。なぜなら、生命は後へは戻らず、昨日と一緒に留まってもいません。

あなたは弓です。その弓から、子は生きた矢となって放たれて行きます。射手(いて)は無窮の道程(みちのり)にある的を見ながら、力強くあなたを引きしぼるのです。かれの矢が遠く遠くに飛んで行くために。

あの射手に引きしぼられるとは、なんと有難いことではありませんか。なぜなら、射手が、飛んでいく矢を愛しているなら、留まっている弓をも愛しているのですから。